HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 13 Jul 2009 21:18:52 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:都議選 与党半数割れ 首都にもチェンジの大波:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

都議選 与党半数割れ 首都にもチェンジの大波

2009年7月13日

 変革を求める大波が首都にも押し寄せた。東京都議選で自民が惨敗、与党は半数割れした。民意のうねりは、総選挙での政権交代を予感させる。

 象徴的だったのは七つある定数一の選挙区だ。首都のど真ん中、千代田区で自民は都連幹事長が落選、中央区でも民主新人に敗れた。伝統的に保守が強く、麻生太郎首相が告示日第一声の場に選んだ青梅市も勝てず島部以外で議席を失った。50%を超えた高投票率が影響した。

 名古屋市長選から始まった地方選シリーズで、与党はこれで五連敗。奈良市長選でも民主系候補が勝利し「次は総選挙の番か」との悲壮な声が自民内から漏れる。

 想定超す逆風が与党直撃

 前々回の都議選は、自民候補五十五人のうち五十三人が当選する圧勝だった。当時は不人気だった森喜朗氏から小泉純一郎氏へ政権が引き継がれた直後で、無党派層から多くの票を取り込んだのが勝因となった。

 今回は全く逆の結果である。

 二人区でも自民は残り一議席を公明、共産と競り合った。三人区以上も、下位争いを演じたところが多く、力負けの印象だ。公明も楽な戦いではなかった。

 都議選勝利で弾みをつけて総選挙へなだれ込む−。

 低支持率に苦しむ麻生首相の筋書きも実らなかった。島部を除く公認候補事務所回りをする異例の対応をとっただけに徒労感は小さくあるまい。

 自民執行部は当初から、勝敗ラインを「自公過半数」と低めに設定していた。

 だが、責任論を免れようとする当事者の思惑をあざ笑うかのような大逆風が与党を直撃した。

 第一党の座は民主に明け渡し、与党は過半数に届かなかった。四十年にわたって守り続けてきた第一党から転落した自民の衝撃は計り知れない。

 増す「政権交代」の現実味

 大量の税金をつぎ込んだ新銀行東京の再建、食への不安を抱える築地市場のガス工場跡地移転…。

 都議会与党には、厳しい争点ばかりだった。有権者の出した答えは石原都政への事実上の「ノー」であった。石原慎太郎知事は国政のせいにするわけにはいかない。都民の声を真摯(しんし)に受け止めるべきだろう。

 少数与党の都政運営はいばらの道を余儀なくされよう。二〇一六年五輪招致が実らなければ、石原知事は辞任して都知事選になるとの観測すら取りざたされている。

 麻生首相と政権与党にとっては今回の結果は国政と地方選は別だと言ってはいられないほどの激震となった。有権者が発したメッセージは明瞭(めいりょう)だった。自公政治への「ノー」でもあり、「政権交代前夜」の雰囲気が政界に強く漂う。

 首相は半年間で四回も予算編成した実績を掲げ「経済の麻生」をアピールしている。街頭でも「政権交代は景気後退だ」と、民主批判に躍起になった。

 だが、政府が「景気底打ち」を宣言しても、都民の生活感とは懸け離れたものだった。家計の厳しさは相変わらずで、ボーナス減も追い打ちを掛けた。失業率も依然高い。年金問題も将来の不安感をぬぐえないでいるのが実情だ。

 東国原英夫宮崎県知事の人気を当て込んで、自民が総選挙出馬を懇願したことも都民に受け入れられなかったようだ。政権・与党に求心力がない。その意味で都議会与党は迷走する政権の犠牲となった格好だ。

 一方、民主の鳩山由紀夫代表らは連日街頭に立った。個人献金問題を抱える鳩山氏の表情はさえなかったが、党の動員力が弱いにもかかわらず、多くの有権者が足を止めていた。政権交代を求める風をうかがわせるものだ。

 地方選を重ねる度に反自公の波が強くなったようだ。本紙出口調査では、自民支持層すら約三割が民主へ流れている。

 共産党は「都議会は自公民体制だ」と反自民・反民主を掲げて戦ったが、社民党や東京・生活者ネットワークと同様、高投票率で埋没した。

 自民惨敗で、麻生降ろしが激化しそうだ。総裁選前倒しへ党両院議員総会開催の動きも出てこよう。そんな中、民主は今夕にも内閣不信任案を提出する。総選挙を前にだれが衆院を解散するかさえ分からない異常事態の様相だ。

 奇策はもはや通じない

 首相は総選挙直前の党首交代について「選挙目当ての行動で、姑息(こそく)な政党と思われることはあってはならない」と語ったという。ブレずに有言実行を求める。

 国民の信を問わない政権が三代続いたあげく、四度目があれば、有権者に総スカンを食らうのは目に見えている。自民も今さら見苦しいマネは慎んだ方がいい。奇策は傷口を広げるだけである。

 

この記事を印刷する