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社説2 脳死者家族が納得いく移植を(7/14)

 臓器提供の条件を緩和した臓器移植法改正案が成立した。

 改正法は脳死になった本人が以前に臓器提供を拒否する意思を示していなければ、家族の承諾で臓器を提供できるようにする。現行法は本人の同意を不可欠の条件にしており、大きな転換である。臓器提供の年齢制限をなくし子どもの臓器移植にも道を開く。

 国内での脳死臓器移植は現行法が施行されてから12年間で81例にとどまる。国内で移植手術を受けられず渡航移植に踏み切る患者があとを絶たない。特に子どもの患者は事実上、渡航移植しか道がなかった。渡航先の国からは「自国民の手術の機会を日本人が奪っている」と厳しい目を向けられている。

 世界保健機関(WHO)は来年5月にも渡航移植の自粛を求める新指針を決議するとされる。国内での臓器提供を増やし渡航移植をなくしていく改正だといえる。

 改正法は「脳死は一律に人の死」という考えに立ちながらも、脳死者の家族が臓器提供を承諾する場合に限って「脳死=人の死」を適用する。家族が臓器提供を望まなければ法的な脳死判定も拒否できる。個人の死生観の違いを尊重する考え方は現行法と変わらない。

 改正を踏まえ移植医療を着実に普及させるには、脳死者の家族と移植を待つ側とを仲立ちする「移植コーディネーター」の育成・増強が欠かせない。臓器提供は家族が心からの善意で承諾すべきもので、万が一にも医師などからの強要や圧力があってはならない。

 亡くなっていく人を家族がみとる十分な時間が必要だとの指摘も法案審議の中で出た。臓器提供を承諾した家族が納得し、後悔をしない医療でないと長続きはしない。

 また救急医療は救命に全力を尽くすことが大前提だが、不幸にも脳死者が出た場合、移植医療に協力できるような体制が病院にできているかといえば、まだ十分ではない。約1年後の施行までの課題は多い。

 改正法は政局絡みで追い立てられるように成立したが、法案審議の過程で脳死臓器移植への関心が高まった。移植を定着させるのに必要な体制作りをめぐる議論を深めたい。

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