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都議選終えて―混沌の出口はただ一つ

 衆院の解散・総選挙をめぐる政局の行方が、ますます混沌(こんとん)としてきた。

 きのうの東京都議選で、民主党が大きく議席を伸ばし、第1党に躍り出た。一方、自民党は惨敗し、公明党とあわせた与党で過半数を割り込んだ。2大政党の勢いの差は明らかだ。

 都議選とはいえ、都政に絡む争点はすっかりかすみ、総選挙の前哨戦そのものの盛り上がりだった。麻生首相が自ら離島を除くすべての自民党候補の事務所を回ったのも、この選挙が政権の命脈を決定づけかねないと見たからだろう。

 それだけに、首相が被ったダメージは深刻だ。先週の静岡県知事選での敗北に続いてのことであり、政権交代への有権者の期待の大きさがくっきりと浮き彫りになった、と見ていい。

 「麻生首相で総選挙は戦えない」「このまま選挙に突入すれば集団自殺だ」。そんな解散先送り論が、与党内で一気に燃え上がるのは必至だろう。

 だが、総選挙を先延ばししたとしても、自民党に活路がひらけるとは思い難い。衆院議員の任期切れは2カ月後だ。総裁選の前倒し論やタレント出身の東国原英夫宮崎県知事らの擁立説もあるが、有権者の目には最後のあがきとしか映らないのではないか。

 首相にも言っておきたい。与党の有力者には、北朝鮮制裁のための貨物検査新法などを成立させてから解散をという意見が多い。だが、それに従ったとしても、党内の「麻生おろし」の風圧は強まる一方だということだ。

 とにかく時間を稼ぎ、首相の退陣を前提に、選挙向けの新しいカオを選ぶ。いまや1年生議員から幹事長経験者にまで広がる解散先送り論の、主たる狙いはそこにある。

 さらに、勢いに乗る民主党は内閣不信任案を衆院に、首相問責決議案を参院に提出する構えだ。不信任案は与党の数の力で否決できるにせよ、国会審議は混乱し、法案の処理はおぼつかなくなる公算が大きい。

 注目されるのは、都議選の投票率が前回より10ポイント以上もあがったことだ。静岡県知事選では16ポイントも上昇した。自らの一票で政治の閉塞(へいそく)状況を変えたい。そんな有権者の思いが広がっているのは間違いない。

 自民党の動揺は深刻だ。今後の展開によっては、党の分裂さえありうるかもしれない。わずか10カ月前、政権を引き継いだ首相にとっては思いもよらなかった事態だろう。

 「民主党に政権担当能力はない」と首相はいう。ならば目の前の危機にあたふたするのではなく、責任ある政策、政治の姿をこそ有権者に示し、民主党と真正面からぶつかることだ。

 逃げずに堂々と国民に信を問う。麻生首相はその初心に立ち返り、解散・総選挙を決断すべきだ。

無年金問題―まず権利回復に全力を

 年金を受ける権利があるのにそれを知らず、受け取っていない人が約3万人もいるようだ。無年金者を対象にした社会保険庁の調査でわかった。

 コンピューターの記録で25年加入の受給資格に満たない人を抽出調査したところ、回答した685人のうち32人(4.7%)が、本当は条件を満たしていながらそれを知らなかった。

 2年前の調査では、60歳以上で無年金の人は約73万人。死亡した人を除いても3万人以上が資格はあるのに年金を受けていないという勘定になる。

 もっとも多かったのは、年金額には反映できないが加入期間として数えられる「カラ期間」という仕組みを知らなかったケースだ。

 例えば、サラリーマン家庭の専業主婦や学生の場合、国民年金加入が義務づけられる以前については、加入していなくても期間に算入できる。厚生年金に短期加入して脱退手当金を受けた場合も同様だが、それを知らずに年金が出ないと思いこんでいた人がいた。

 いわゆる5千万件の「宙に浮いた年金記録」の中から自分の記録が見つかって、年金が受けられるようになったケースも多かった。

 社保庁のいい加減な仕事のせいで、本来もらえる年金が受け取れないなどということは言語道断だ。

 社会保険事務所や市町村の年金相談窓口で、記録上は加入期間が25年未満でも、埋もれている記録や加入期間に算入できる事情がないかどうか、親身になって点検していれば防げた例も少なくないのではないか。

 社会保険庁は、すでに受給世代になっている無年金の人たちの権利回復を最優先に、確認を急がねばならない。住所が変わっている人も少なくないが、自治体と協力して出来る限り手を尽くすべきだ。

 同時に、無年金に陥る人をつくらないための取り組みも重要だ。

 国民年金には70歳まで任意加入できる仕組みがある。今は加入期間が25年に満たない人の中にも、この制度を利用してあと少し保険料を納めれば年金が受けられる、という人たちがいる。ぜひ働きかけを強めたい。

 無年金を生む一番の原因は保険料の未納や制度への未加入だ。多くは経済的な事情からだが、こうした人たちには保険料の免除手続きをしてもらうことも大事だ。

 そもそも、25年加入しなければ、年金が一切受けられないという制度そのものが疑問だ。10年程度に短くしてはどうかという意見は与党内にもある。

 正社員以外にも厚生年金の加入を広げ、収入に応じて保険料を払いやすくする法案は、国会に提出されながら一度も審議がされていない。

 こうした課題を長く放置している政治の責任も重い。

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