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農地囲い込み 国際的な行動規範が必要だ(7月12日付・読売社説)

 食料輸入国や食料確保に不安を持つ国が、発展途上国の農地を買収したり、借り上げたりする動きを強めている。

 自国向けの作物を大規模に栽培し、輸入拠点にするためだ。世界的な食料価格高騰の再来に備え、安定した食料調達先とする狙いがある。

 一般的には農業投資の拡大は食料増産や生産性向上に役立つ。だが、無秩序な“農地争奪戦”が過熱すれば、途上国などからの農作物の収奪につながりかねない。

 イタリアで開かれた主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)の首脳宣言には、農地取得に関する国際ルールを定めることが盛り込まれた。主要8か国は途上国や国連などと連携し、新たな行動規範づくりを急ぐべきだ。

 農地取得に熱心なのは中東産油国と中国だ。豊富な外貨準備をもとに、アジアやアフリカですでに10万ヘクタール単位の農地を手に入れ、小麦やトウモロコシ、綿花などを栽培する計画を進めている。

 交渉中の案件も含めると、これらの国や企業が購入または賃借した農地は2000万ヘクタールに達するという。日本の耕地総面積の4倍強の農地が囲い込まれつつある。

 農業開発の資金が不足している途上国にとって、農地の提供には、土地改良やかんがい施設の整備、新たな農業技術の導入といった利点がある。

 一方、軍事的、経済的な圧力で、途上国側が不利な条件の下、農地を収奪されたり、無理な開墾によって水の汚染や生態系が破壊される問題も指摘されている。

 国連食糧農業機関(FAO)は「農地や水を丸ごと買い上げるのは新たな植民地主義だ」と警告している。途上国側の農民の反対で取得を断念した例も出始めた。

 こうした動きは、世界一の食料輸入国である日本にとっても、座視できない問題だ。

 国際ルールの策定には日本も積極的に関与し、途上国の食料事情や環境に十分配慮したものにすることが肝要だ。食料輸出国による一方的な輸出規制に歯止めをかけ、貧しい国に食料が行き渡るよう努めることも大事だ。

 日本が優先すべきは、農地争奪戦への参入ではない。40%にとどまっている食料自給率を引き上げることである。

 国内には40万ヘクタールもの耕作放棄地があり、農業従事者も減少する一方だ。農地の集約や休耕田の再活用による農業の再生策も始まったばかりだ。自らの農地の活用こそ食料安全保障の王道だろう。

2009年7月12日01時38分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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