HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 12 Jul 2009 01:19:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:本棚が満杯になると、やむを得ず本の整理を始めるのだが、これ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年7月12日

 本棚が満杯になると、やむを得ず本の整理を始めるのだが、これがなかなか難しい。どの本も古くからの友人のようで、別れがたい▼久々の出会いに、つい手に取って読み始めてしまう本もある。大げさかもしれないが、何やら運命を感じるのだ。新しい発見、喜びがあるかもしれない。かくして作業は一向に進まないのである▼『水曜の朝、午前三時』(蓮見圭一著)もいつから本棚にあったのだろう。四十五歳で逝った翻訳家で詩人の女性が病床で、娘のためにテープを四巻分吹き込んだ。小説は内容を再現する形で進行していく▼<人生は宝探しなのです><今度はあなたたちの番です>。女性が娘にこう呼び掛ける個所は、いつも頷(うなず)きながら読んでいる。嫉妬(しっと)や憎悪、悪意で宝探しを邪魔する人が必ず現れるが、それさえも楽しめばいいと説く。邪魔する人がいないと<宝探しもひどく味気ないものになっていたと思うから>である▼宝探しといえば、応援してくれる人も必ず現れることを忘れてはなるまい。世界中でベストセラーになった小説『アルケミスト』(パウロ・コエーリョ著)を読むと、そんな心境になる▼宝探しを続ける羊飼いの少年に対し、錬金術師や年老いた王様が語りかける。<人が本当に何かを望む時、全宇宙が協力して、夢を実現するのを助けるのだ>と。信じてみる価値は十分にある。

 

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