農林水産省から興味深いデータが公表された。日本の農業で長年の懸案になっているコメの生産調整(減反)について、必要かどうかを生産者や消費者らに聞いたアンケートである。
生産者への質問では、「農家の自主性や経営の自由度が高まるように見直すべきだ」と緩和を訴える回答が38・7%と最多だった。廃止派も13・1%に上り、生産者の過半数の51・8%が減反の緩和か廃止を求めていることが分かった。
これに対し、減反の維持・強化が必要とする意見も計45・9%あった。生産者の間では、考えがほぼ二分されている現状が浮き彫りになったといえる。消費者への質問でも廃止と維持派が拮抗(きっこう)し、生産者と同じような傾向が示された。
減反はコメ消費量の減少などに伴い、1970年代から本格化した。今では水田の約4割で稲作ができない。これが生産者の意欲を奪い、耕作放棄地の増加や担い手不足などにつながっている。減反をするしないで、地域社会に暗い影を落とし続ける。現行制度が限界にきているのは明らかだろう。
賛否両論が相半ばする中で、どういう方向性があるのか。生産者のアンケートでは、小規模な農家は緩和・廃止派が多く、規模が大きくなるほど維持・強化派が増加する。大規模農家の方が、減反で米価下落を防ぎたい意向が強いようだ。
営農形態によって考えが異なるのは当然だろう。そもそも長年にわたり一律的な減反を強いること自体、無理がある。
打開策として、石破茂農相は減反選択制を打ち出した。減反をするしないの判断は各農家に委ね、経営の自由度を高める。生産量が増えて米価が下がった場合、減反に応じた生産者に限り助成するというものだ。維持と廃止の中間をいく減反緩和策といえる。
従来から専門家の間で「現実的な落としどころ」として有力視されてきた案である。石破農相は選択制の導入方針を明確化したものの、立ち消え状態に陥っている。
次期衆院選を前に、導入を決めると農村票が割れる可能性があるため、自民党農水族の反対で結論を先送りしているといわれる。野党の間でも同じような空気が強い。
しかし、現状のままでは農業弱体化に歯止めはかかるまい。衆院選は減反選択制の是非を問う好機である。今回の調査結果を踏まえ、正面から議論を深める必要がある。