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麻生首相の笑顔はバネ仕掛けを思わせる。まさに破顔一笑、記者に囲まれた渋面とは主が違うかのようだ。周囲の状況がこれだけ悪くなっても、その笑顔は形状記憶合金のごとく緩みがない。先のイタリアでも内憂そっちのけで弾(はじ)けた▼かの国には〈敵なら自分で守れるが、友の裏切りは神に防いでもらうしかない〉という意味の格言があるそうだ。政界には神も仏もいないのか。つい10カ月前、その笑顔を買って選挙の顔に据えた自民党内で、本人の留守に「麻生おろし」の大合唱である▼この党の関心は今、衆院選の負けをいかに小さくするかにある。きょう投開票の東京都議選で負ければ、麻生首相による解散・総選挙だけは阻もうという勢力が一気に動き出す気配だ▼とはいえ、無理やり看板を掛け替えては世論がさらに離れかねない。都議選を受けて自発的に退いてくれないかと、虫のいい期待が膨らむゆえんである。だが首相は、結果にかかわらず政権にとどまる意向を示した▼悪い友と交わるより孤独がまし、という。首相が意地を通すなら、野党が喜ぶ早期の「やけくそ解散」だろうか。ここは思案のしどころ、好きなだけブレたらいい。トップの覚悟のほどを試しながら、夏の政局は佳境に入る▼昭和前期の哲学者、三木清の『人生論ノート』にこんな一節がある。〈孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にある〉。サミット外遊という山にしばし逃れて、風雲急の東京に戻った麻生さん。笑顔の下の孤独も正念場を迎える。