地球温暖化や経済危機への対処などを話し合う主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)が、今年4月に震災に見舞われたイタリア中部のラクイラで開かれている。
中国やインドなど新興国の存在感が高まる中、今回はG8だけでなく、新興国を交えた拡大会合や主要経済国フォーラム(MEF)なども開かれる。しかし、新興国の代表で先進国と調整できるキーパーソン的存在である中国の胡錦濤国家主席が、新疆ウイグル自治区の暴動対処のため急きょ帰国した影響は大きかろう。議論の行方にも不透明感が増している。
主要議題の温暖化対策でG8は、2050年までの温室効果ガスを少なくとも50%削減、先進国全体では80%以上削減するとの長期目標を掲げた首脳宣言を発表した。気温上昇を2度以内に抑えることにも言及。昨年の北海道洞爺湖サミットから大きく前進したといえよう。
しかし、G8に新興国を加えたMEFの首脳宣言には削減の数値目標は盛り込まれない見通しだ。先進国と発展途上国との溝は埋まっておらず、今後の国際交渉も困難が予想される。排出量を伸ばす中国など新興国の合意が得られなければ、実効性は期待できまい。
世界経済の現状に関しては「安定化の兆し」を認める一方で、雇用悪化など不況を深刻化させかねない下振れリスクへの警戒感を強調。雇用の維持・拡大に向けた政策を各国が推進することなどを盛り込んだ首脳宣言を発表した。
「出口戦略」を本格的に探るにはまだ時間がかかりそうだ。経済成長、貿易拡大などの課題は、世界経済をけん引し成長余力のある中国などの新興国が加わらなければ解決策も見いだせまい。
核軍縮に関しては、積極的に取り組むオバマ米大統領との共同歩調を鮮明にした。政治分野の首脳宣言では、北朝鮮の核・ミサイル問題を強く非難するとともに、拉致問題にも直ちに取り組むよう言及。包囲網構築を目指す日本は一定の成果を得たといえよう。ただ、北朝鮮は国際的な圧力に反発を強めており、中国を含む関係国の強力なアプローチが必要だ。
経済や環境など国境を越える国際的課題に対処するには、G8の枠組みでは限界があろう。胡主席の不在は図らずも中国の存在感を浮き彫りにした格好だ。今回のサミットがさしたる成果なく終わればG8の威信は一層低下してしまうだろう。