民主党の鳩山由紀夫代表は政治資金の虚偽記載問題について、いまだに十分な説明をしていない。6月末に公表した以外にも事実と違う記載が指摘され、会計担当者の動機など疑問点はなお多い。次期衆院選を控え、鳩山氏は国会の場でも自ら説明責任を果たしてほしい。
鳩山氏は10日に日本記者クラブで記者会見し、虚偽記載について「今後とも国民に説明しながら、選挙において審判を仰いで参りたい」と強調した。一方で担当したベテラン秘書の動機に関しては「解明されているわけではない。弁護士に任せるしかない」と述べるにとどめた。
鳩山氏は秘書が寄付金控除などの脱税や詐欺に関与した可能性を否定した。だが、国会の政治倫理審査会などへの出席に関し「現場や党の判断に従っていきたい」と否定的な考えを示したのは納得できない。
鳩山氏は6月末の記者会見で、自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」の政治資金収支報告書に虚偽記載が多数あった事実を認めている。判明しただけで2005〜08年の個人献金のうち計2177万円、約90人分が事実と異なっていた。
すでに死亡した人や一度も献金をしたことがない人も含まれ、不正は秘書が一存で実行したというのがこれまでの説明だ。「架空献金」の原資はすべて鳩山氏が預けていた個人資金だとしている。
しかし、多くの偽装がなぜ行われたのかという理由はなお不明だ。鳩山氏は当初「(秘書には)個人献金があまりに少ないので大変だとの思いがあったようだ」と説明し、のちに個人献金はむしろ他の議員より多いと指摘されると「企業献金が集まらない焦り」と修正した。
自民党は鳩山氏の02〜04年の収支報告書を独自に調べ、訂正した個人名と同姓同名の献金が計906万円、47人分あったと指摘している。鳩山氏が弁護士や民主党に対応を任せると繰り返す姿は説明責任から逃げているような印象がぬぐえない。
民主党が主張するように自民党側にも「政治とカネ」を巡る様々な疑惑が浮上している。政権選択がかかる衆院選が近づく中で、与野党は事実を早期に解明し、有権者にきちんと説明する責務を負っている。