インドネシアは再び「東南アジア諸国連合(ASEAN)の盟主」と呼ばれるようになるのか。今回の大統領選挙で再選を確実にしたスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領の今後5年間の政権運営にかかっている。持続的成長を達成できれば、世界経済にも貢献できるだろう。
大統領選は大きな混乱もなく終わった。大統領の直接選挙は2004年に続いて2度目だ。民主化が定着してきた証しとして評価したい。
インドネシアはかつて新興経済国ともいわれた。だが、1997年のアジア通貨危機、98年のスハルト政権崩壊から政治の混乱やテロが続いて国際的地位が低下した。
ユドヨノ政権はイスラム過激派を摘発、治安の回復に努めた。05年以降、国内総生産(GDP)の伸び率は昨年まで5%後半から6%台で推移した。今年1〜3月期は前年同期比4.4%増と、他のASEAN諸国に比べ高めの成長となった。
1期目のこうした実績がユドヨノ氏の再選を後押しした。2期目は副大統領に就くブディオノ前中央銀行総裁と、公約の「2014年の7%成長」を目指すが、安定的な成長を続けるには課題も少なくない。
外国からの投資を拡大するにはインフラの整備や不透明な投資ルールの改善が不可欠だ。ユドヨノ政権は懸案の汚職撲滅にも取り組んだが、硬直的な労働法制などが企業の進出をためらわせている。企業活動を支える電力もなお不足している。
ユドヨノ氏は勉強家としても知られ、5年前の初当選後に取得した博士号の論文のテーマは「貧困と失業の克服」だった。社会の安定に向け貧困問題の解決も急いでほしい。
日本は東アジア全体の発展と安定のためにも、ASEANの大国インドネシアとの経済的な連携強化が欠かせない。
経済連携協定(EPA)は昨年7月に発効し、看護師、介護福祉士の候補者らが来日している。だが、条件が厳しく看護師は「母国の資格を持ち2年以上の経験があり、来日後3年以内に日本の資格も取る」必要がある。条件緩和や資格取得支援などを求めたい。EPAには貿易自由化対象外の品目などもあり、その弾力的な見直しも大きな課題だ。