主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)が開幕した。国際社会が抱える多くの課題は、いまや新興国や途上国との協調行動なしに解決できない。G8と呼ばれる会議の枠組み見直しが不可欠だ。
今回のサミットは「G8体制の終わりの始まり」になるかもしれない。予兆は経済危機をきっかけに昨年秋以来、二度にわたって開かれた二十カ国・地域(G20)の会議にはっきりと表れていた。
経済の実力を示す購買力平価で測った世界の国内総生産(GDP)に占める日米欧などG8主要国の割合は計45%であるのに対して、主な新興・途上国十一カ国は計30%に達する。
金融危機を克服するための経済政策協調はもとより貿易自由化、地球環境保護、さらには核拡散防止といった課題のどれ一つをとってみても、新興国や途上国が重要な役割を果たすようになった。
たとえば喫緊の課題である経済危機対応では、中国が率先して財政刺激策に踏み切った。半面、ロシアやインド、ベトナムといった国々は鉄鋼製品や農業機械、大豆油などの関税引き上げに走り、保護主義の懸念も強まっている。
温室効果ガスの削減をめぐっては、中国やインドなど新興国の同意が得られるかどうかが焦点になるが、新興国側は「地球温暖化は先進国の責任」と反発している。食糧安全保障でも、食料生産に大きな役割を果たす途上国を抜きにした議論は現実味を欠く。
核拡散問題では、核実験を強行した北朝鮮はもちろん、核保有国の中国、インド、パキスタンなどとの協議が不可欠だ。平和と繁栄を具体的に議論して、より良き世界を目指すには、G7やG8といった主要国だけの枠組みでは不可能になってしまった。
中国はロシア、インド、ブラジルとともに先月、BRICs首脳会議を開いた。ラクイラでも八日、メキシコや南アフリカなどと首脳会議を開いて新興国の「団結」を誇示した。その一方、米国とは気候変動に関する枠組み協議に乗り出すなど緩急自在な姿勢で存在感を増している。
サミットに来た胡錦濤国家主席は新疆ウイグル自治区での暴動を受けて、急きょ帰国せざるをえなくなった。複雑な国内事情や「もろさ」を抱えているのは、中国に限らず、多かれ少なかれ新興国や途上国に共通している。
そんな新興国をどう議論に引き寄せて、折り合いをつけていくか。主要国の重い課題である。
この記事を印刷する