中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市内で発生したウイグル族住民の暴動は、漢民族側による数万人規模の抗議行動に発展し、さながら民族抗争の様相を呈してきた。1949年の中国建国以来、当局が認めた少数民族による暴動としては最大規模である。
胡錦濤国家主席は急きょ、主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)への参加を取りやめ帰国した。共産党指導部の強い危機感の表れといえよう。
中国外務省は、暴動は世界の亡命ウイグル人組織を束ねる「世界ウイグル会議」(本部ドイツ・ミュンヘン)が扇動したと主張する。一方、同会議の主席で米国に亡命中の女性活動家ラビア・カーディルさんは、扇動したとの指摘を「完全に誤りだ」と否定している。
中国の少数民族は55。全人口の1割弱を占める。自治区は新疆ウイグルを含めて五つあり、各民族は憲法で平等が保障され、各自の言語を使うことができるとされている。
中国政府はまた「民族や宗教の問題ではなく、反暴力、反独立の問題」としているが、今回の暴動の背景に、昨年3月に起きたチベット自治区の大規模暴動と同様、人権侵害や同化政策、表現や宗教の自由への抑圧がなかったとはいえまい。
さらに漢民族による前例のない大規模抗議行動が起きたことは、「安定と団結」を名目にして力で抑え込む中国の民族政策が限界点に近いことを示しているといえる。
国連の潘基文事務総長は、平和的な対話を呼びかけ、ピレイ国連人権高等弁務官は「透明で独立した立場からの調査を求める」との談話を発表した。
中国政府はこうした国際社会の声に、今度こそ真剣に耳を傾け、実行しなければならない。