HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 08 Jul 2009 21:19:02 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:市民税減税 地方自治の力を示せ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

市民税減税 地方自治の力を示せ

2009年7月8日

 名古屋市の河村たかし市長が最大の公約にした市民税10%減の基本条例成立が市議会で先送りになった。税は安い方がいいが、福祉や医療を犠牲にしては意味がない。地方自治の力が試されている。

 「税金が高すぎる」。不況で家計が苦しく、ため息をつく世帯が多くても「じゃあ市町村税の減税を」と実行した首長はかつてない。それでは自治体の財政がより厳しくなる、と考えるのがこれまでの常識だからだ。

 河村市長は「減税」を公約に、四月の市長選で過去最多の五十一万票で当選した。有権者が減税をいかに期待しているかが分かる。常識にとらわれず挑戦する姿勢は率直に評価したい。

 きのう、基本条例は市議会で継続審査となった。市議会野党の自民や公明を含め、減税自体への反対は少ないが、条例は「来年四月から」とするだけで具体的方策は何も詰まっていなかった。

 何と言っても、財源を確保する見通しが立たないことは不安だ。個人、法人合わせ市民税を10%減らせば約二百五十億円の歳入減となるが、どう穴埋めするのか。

 市長は、省ける事業を七月中にもまとめるよう、各部局に指示している。既に財政難で政策を絞り込んできたはずの各部局が従来と同じ発想では、無駄などありません、ということになってしまう。その一方、歳出カットを至上命令にすれば、例えば目立たないが弱者救済に不可欠な福祉などの方策は「抵抗が少ない」と安易に切り捨てられはしないか。

 市長は、減税以外に「中学生までの医療費無料」など福祉、医療の充実を公約に盛り込んでおり、これらを合わせると年間三百億円以上が必要との試算もある。よほど大胆な改革をせねば予算は破たんしかねない。

 東京都杉並区では、二〇一〇年度から基金を積み立て、運用益で十年後をめどに10%減税を始める。愛知県半田市でも10%減税を公約に新人市長が当選している。

 名古屋の挑戦が成功すれば、全国に広まる可能性がある。来年度から減税を始めるには、遅くとも十一月議会で条例を成立させる必要がある。河村市長もその時は財源の根拠などをはっきり示した条例案を出すと明言している。

 「地方自治は民主主義の学校である」と言われる。今から四カ月ある。減税の前例はない。市長、市議会、市役所にはそれぞれに知恵も譲歩も求めたい。

 

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