天気予報を見ると、ここ数日は、列島のほとんどが雨がちの空模様で推移するようである▼<雨の降る日は天気が悪い>とは、分かりきっている、当たり前だ、という場合に使う古い遊び言葉の一つ。どうせ、分かりきっていることを書くのだからと、土井晩翠は自分の随筆のタイトルにも採用している▼しかし、あながち、当たり前のこととも言えない。適量でさえあれば、農家や水不足に悩む地域にとっては<天気が悪い>どころか、恵みの雨だ。猛暑には「お湿り」だと喜ばれる。加えるに、日本人の感性には乾燥より湿気、雨の風情がしっくりくるところもある▼私事になるが、かつて乾燥地帯にある海外の任地から三年ぶりに帰国した日、列車の窓外に見た光景は忘れられない。青々とした水田地帯が霧のような雨に煙っていた。その時、初めて、ああ、日本に帰ってきた、としみじみ思った▼梅雨は日本の雨期だが、毎日雨というわけでもなく、いわゆる梅雨晴れの日も少なくない。熱帯地方のはっきりしたそれに比べればはるかに曖昧(あいまい)で、その辺り、いかにも日本向きの雨期という気もする▼無論、ただでさえ厳しいご時世、雨だと一層、気分がふさぐという人も多かろう。だが、ハワイにはこんな言葉もあるらしい。<NO(ノー) RAIN(レイン) NO(ノー) RA(レ)INBOW(インボー)>。雨降ればこそ、後に美しい虹も架かるのである。