与野党対決の構図となり、衆院選の前哨戦と位置付けられた静岡県知事選で、民主党などが推薦した経済学者川勝平太氏が与党の推す前参院議員坂本由紀子氏らをおさえ、接戦を勝ち抜いた。
昨年9月の麻生政権発足以来、自民、民主両党が対決した大型地方選としては民主党の5勝目である。名古屋、さいたま、千葉の各政令市長選に続く4連勝で、次期衆院選での政権交代実現に弾みをつけた格好だ。
自民党にとっては手痛い敗北となった。東京都議選直後の衆院解散を模索する麻生太郎首相の一層の求心力低下は避けられず、解散戦略の見直しも迫られよう。
静岡県知事選は4期16年にわたって県政を担った石川嘉延前知事の辞職に伴い、新人4人で争われた。民主党は候補者の一本化に失敗し危機感を抱いていたが、与党推薦候補との対決色を鮮明に打ち出すことで勝利を収めた。自民党との勢いの差が表れたともいえる。
鳩山由紀夫民主党代表の政治資金虚偽記載問題はほとんど争点にならなかったという。民主党の岡田克也幹事長は「政治を変えなければならないとの有権者の声の高まりを感じた。この勝利を東京都議選に引き継ぐ」との談話を発表した。
一方、与党内では「民主党が分裂し、勝てるはずだった静岡県知事選で勝利を逃したのは麻生首相の不人気が一因」との見方が強い。知事選敗北を受け、自民党内では解散先送りと「麻生降ろし」を模索する動きが広がりそうだ。麻生首相にとって「背水の陣」となる都議選で勝敗ラインの「与党過半数」に届かなければ、党内で退陣論が一気に噴き出し政局が流動化する可能性もでてこよう。
共同通信の全国緊急電話世論調査では、麻生内閣の支持率は10%台を脱し23・4%とやや持ち直した。しかし、その実態は78%が鳩山氏の説明を「納得できなかった」とした政治資金虚偽記載という敵失による「相対的上昇」にすぎない。
与党内では早期解散を避け、28日の会期末まで鳩山氏の政治資金虚偽記載問題を徹底的に追及すべきだとの声も高まりつつある。いずれにせよ、麻生政権の命運を左右するのは12日投開票の都議選の結果次第ということだろう。
ここまでくれば党利党略でいたずらに混乱を長引かせるよりも、衆院選のマニフェスト(政権公約)づくりを急ぎ、堂々と国民に信を問うべきではないか。