政府は、北朝鮮に出入りする船舶の貨物検査を行うための北朝鮮貨物検査特別措置法案を閣議決定し、国会に提出した。
国連安全保障理事会の制裁決議に沿ったもので、与党のプロジェクトチームが中心になって法案をまとめた。焦点だった検査の主体は海上保安庁とし、相手が重武装するなど海保だけでは対応できない場合、自衛隊法に基づく海上警備行動により海上自衛隊が対応する。
政府は海自を主体とする案も検討したが、公明党の主張に沿って海保主体となった。北朝鮮は2度目の核実験に続き、今月4日には弾道ミサイルを連射している。特措法が成立すれば圧力となろう。
だが、不透明な部分もある。民主党内には賛同する意見があるが、安全保障に絡む問題だけに党としてまとまれるのかどうか。また、成立前に麻生太郎首相が衆院解散に踏み切る可能性もないではない。
公海、領海での検査には船長の承諾が必要で、承諾しない場合などには日本の港への回航を命じることができる。公海での検査や回航命令には、所属国の同意も必要とした。しかし、実際問題として北朝鮮が同意するとは考えにくい。国会での法案審議の段階では検査の実効性をどう確保するのか、詰めていかなくてはなるまい。
特措法が適用される地理的な範囲も判然としない。海上自衛隊が乗り出す事態を考えればこの点も十分な詰めが必要だが、基本的に「海保が主体」という点を、政府は肝に銘じておいてもらいたい。
米軍が追跡していた北朝鮮船舶は母国に戻った様子で、貨物を調べられるのを恐れたことが理由のようだ。船舶検査は有効であり、関係各国との緊密な連携も必要になろう。