今月下旬、三菱自動車と富士重工業が電気自動車を発売する。CO2排出ゼロの性能を発揮するには、電力をクリーンにしたり、蓄電池の性能を飛躍的に高めるなど、側面からの支援が欠かせない。
日本初の量産電気自動車(EV)、三菱の「アイ・ミーブ」が一回の充電で走れる距離は百六十キロメートル。家庭でも充電できるが、フル充電には十四時間(百ボルト)かかる。給油所のような高速充電施設の整備はこれからなので、手軽に充電とはいかない。
軽自動車クラスの車体なのに価格は四百六十万円、補助金をもらっても三百二十万円。高級車並みのせいか、二〇〇九年度の販売計画は法人向けを中心に千四百台、一〇年度も五千台と控えめだ。
とはいっても、電気モーターで走るEVには、走行中に二酸化炭素(CO2)を全く出さず、深夜電力を使えば費用がガソリン車の九分の一で済む利点がある。
「今後は電気自動車を普及させる」−。昨年、日中環境フォーラムで中国政府当局者がこう力説した。成長著しい中国は世界最大のCO2排出国に、自動車販売台数も世界一に躍り出た。CO2全排出量の三割以上はガソリン車だ。既に中国は原動機付き二輪車などを電動に切り替え始めた。自動車も家庭に引かれた電線を活用し、CO2を抑える政策へと転じつつある。
米国では新興のベンチャー企業が経営再建中のゼネラル・モーターズやクライスラーの一歩前に出て、高速、かつ四百キロメートルの航続距離を誇るEVの生産を始めている。日産・仏ルノー連合も来年秋に量産を開始し、順次、日米欧の市場に投入していく計画だ。
温暖化ガスの削減という地球的な課題を解決するため、自動車は世界的に「電化」の時代を迎えている。量産がもたらす値下がり効果を期待したい。
EVが持てる力を発揮するには、発電所の段階でCO2を抑え、かつ蓄電池の容量を拡張しなければならない。石炭など化石燃料による発電はCO2を出すため、EVのせっかくの能力を減じてしまう。電力会社もCO2封じに果敢に挑むべきだ。
大容量の蓄電池を開発すれば、太陽光で起こした電気を蓄えてEVに移し替え、CO2の排出をゼロにすることが可能になる。蓄電池の性能向上は電機産業も活気づけ、雇用増をもたらすだろう。
EVが低炭素社会への牽引(けんいん)役を担う。その実現に、電力はじめ、広く関連産業の奮起も望みたい。
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