静岡県知事選は、民主などの推す経済学者の川勝平太氏が自民・公明推薦の候補を破って当選した。勝因は民主への風だけでない。相次ぐ異色首長の誕生は従来政治への地方住民の「ノー」である。
「県政を託せるのは(自民・公明推薦の)この人だけ」。四期十六年間、静岡県政を手堅く進めてきた官僚出身の石川嘉延前知事は選挙戦で言い切った。でも県民の選択は、行政のプロには「託せぬ」と映った学者の川勝氏だった。
六月に開港した静岡空港近くに、県の不手際で航空法の高さ制限を超える立ち木が残った問題で、地権者が伐採に応じる条件にした知事辞職を石川前知事がのみ、退いた。総選挙目前の時期と重なり、全国注視の知事選となった。
静岡文化芸術大の学長だった川勝氏が出馬を正式に表明したのは告示の二週間前。民主からは元参院議員も出て、川勝氏の推薦決定は告示のわずか二日前だった。
各候補の公約に目を引く違いはなかった。でも自公推薦の前自民参院議員ら他の三候補に勝った。同県で非自民の知事は初めてだ。
四月の名古屋市長選から、民主は主な地方選で四連勝である。総選挙に向け、自民には動揺が広がり、民主は一層勢いづくだろう。
だが民主の看板がすべてだろうか。名古屋市長選は、河村たかし市長のざっくばらんさ、千葉市長選では全国最年少市長となる三十一歳の若さにも、有権者は変化の望みを託したはずだ。
今回の知事選も、自公推薦候補が石川知事の下で副知事を務め、事実上の「後継指名」を受けたのに比べ、川勝氏は政治と無縁だった新鮮さが、今の有権者の思いに一番近かったといえるだろう。
宮崎県の東国原英夫知事や大阪府の橋下徹知事もそうだ。ともにタレント人気が手伝った面は否定できないが、有権者が選んだのは政治を変えたい願いの表れだ。
首都東京では、自民と民主が第一党をかけた都議選に突入した。それが終われば、総選挙である。
しかし、自民では「麻生首相では戦えない」と自分の選挙しか考えないような動きがある。東国原知事の総選挙擁立に動いたが、安易な人気頼みではないか。
民主も、小沢一郎前代表に続き鳩山由紀夫代表にも献金にまつわる疑惑が浮上したが、納得できる説明がなされたとは言いがたい。
政治の変化を望む有権者の思いに各党が危機感を抱き、どうくみ取るのか。総選挙の鍵のはずだ。
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