自転車に幼児2人を乗せる3人乗り自転車が今月から全国でほぼ一斉に解禁された。子育て中の母親の声を受けたものだが、今後取り組まなければならない課題も多い。
子どもをサドルの前後に乗せて運転する3人乗りは日常見られる光景ではあったが、以前から道交法で禁じられていた。むろん危険だからだ。
一転して認められるようになったのは、警察庁が2007年末、自転車の運転マナーを定めた教則に3人乗り禁止をあらためて明記しようとしたことに、母親たちが「非現実的だ」と猛反発したからだった。
ただし、認められたのは幼児2人を乗せても十分な強度や制動性能があるなど、警察庁が示した6項目の安全基準を満たした自転車だけだ。幼い子どもを抱えた母親を支援するための限定的な解禁で、乗せる子どもは6歳未満の条件がある。
問題点の中で、まず親にとって痛いのは価格だ。条件を満たす自転車は5万〜15万円もする。高すぎる、と購入を見送る親たちも多いだろう。新型の販売を始めた自転車メーカーも一部にとどまっている。
群馬県前橋市は4万円を上限に購入費の半額補助制度を設けており、東京都三鷹市では今秋からレンタル事業を始めるというが、まだまれなケース。国としても子育て支援の観点から自治体をサポートする仕組みをつくるべきだろう。
安全のための環境整備も重要だ。自転車が関係する事故は08年に約16万件発生し、全事故の約21%を占めている。頑丈な自転車の登場は歩行者にとってさらに「脅威」になりかねない。
自転車は「車両」という認識に立ち、交通ルールを守る安全運転教育の徹底や、自転車専用道の整備にも取り組みたい。