HTTP/1.0 200 OK Age: 108 Accept-Ranges: bytes Date: Sun, 05 Jul 2009 21:19:22 GMT Content-Length: 7633 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Zeus/4.2 Last-Modified: Sat, 04 Jul 2009 14:30:36 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(7/5)

 海外旅行から日本に帰国した後で、使い残した外国の紙幣を財布の中に見つけると、不思議な気分になる。昨日まで普通に使っていた本物のお金なのに、今日は場違いな紙片に見える。玩具の「人生ゲーム」のお札が紛れ込んだようだ。

▼紙幣には「信用」という名の魔法がかかっている。本当は精巧な印刷物にすぎないのに、価値ある通貨に化けるのは、政府や中央銀行が立派な働きをしているという暗黙の了承があるからだ。その効力が及ばない場所では、お札は途端に色あせる。そんな微妙な信用の構造が金融危機で狂ってきたのは間違いない。

▼財政の悪化で、米カリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事が「非常事態」を宣言した。州政府の支払い手段に、小切手や現金ではなく「IOU」と呼ばれる借用書を使うそうだ。「I owe you(私はあなたに借りがある)」を略してIOUである。あてがない約束の紙片を受け取る人はどんな気分だろう。

▼不況で税収が減り、雇用対策や企業支援で歳出が増える。穴埋めで債券を乱発した結果、格付けは下がる一方だ。背筋が寒くなった国は世界に多いのではないか。同州のGDPはカナダやブラジルを上回る。州財政の破綻は一国の政府の倒産にも匹敵する。「IOU」という呪文では、信用の魔法は再建できない。

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