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地球温暖化を食い止め、新たな経済の仕組みをつくろうと、世界は低炭素化を急いでいる。自然エネルギーの拡大は、その有力な手段のひとつだ。
日本でも、太陽光発電の普及をめざす新たな買い取り制度が年内にも始まる。各家庭が太陽光で起こした電気のうち余った分を10年間ほど、今の2倍の価格で電力会社に買い取らせる。
こうした政策の裏付けとして政府が提出していた「エネルギー供給構造高度化法」が成立した。
自然エネルギーの拡大につながるよう、この法律をうまく活用していかなければならない。
ただ、その内容には不安もある。経済産業省の主導のもと、原子力を含む「非化石エネルギー」の利用を促すと同時に、石油や石炭など「化石エネルギー」も有効活用するという。こうした考え方で、自然エネルギー利用の飛躍的な増大を実現できるのか。
目玉事業の太陽光発電の買い取り制度について具体的な記述はなく、制度設計や運用は政省令で決めるという。「経産省に白紙委任してもいいのか」という批判が早くも出ている。
日本には苦い経験があるからだ。
家庭での太陽光発電の設置に補助金を出す制度が94年度に始まり、日本は太陽光発電の世界一になった。だが、経産省が05年度でこの制度を打ち切ると普及に急ブレーキがかかり、ドイツやスペインに抜かれてしまった。
もし今度の買い取り制度が途中で足踏みするようだと、太陽光発電の普及がまたつまずいてしまう。同じミスを繰り返さぬよう、経産省は着実に制度を運用していかねばならない。
それには、社会の動向を見極める基本姿勢も欠かせない。幅広い分野の有識者を集めた審議会で議論したり、国民の声を広く聴いたりして、政策に生かすべきだ。業界の声ばかりくむことのないようにしてもらいたい。
太陽光だけでなく、風力やバイオマスなど、ほかの自然エネルギーも拡大していく必要がある。でないと、麻生首相の掲げた「2020年に再生可能エネルギーの比率を20%にする」という目標の達成はおぼつかない。
もちろん、今度の新法だけで低炭素化を実現できるわけではない。
京都議定書に続く温暖化防止の枠組みづくりに向けて、麻生首相は「20年までに05年比15%削減」という温室効果ガス削減の中期目標を掲げた。しかし、年末の合意をめざして続いている国際交渉で、さらなる数字の積み上げを迫られる可能性も大きい。
自然エネルギーだけでなく、環境税や国内排出量取引などあらゆる手段で大胆な排出削減を検討すべき時だ。温暖化対策の基本理念と、それを実現する具体的な道筋を示す気候変動対策の基本法を早くつくる必要がある。
街に防犯カメラが増え続けている。
警察庁は今年度、通学路の安全確保のため小中学校の周辺に設置し、民間団体に管理を任せるモデル事業を実施する。繁華街には、けんかなど人間の不自然な動きを自動的に感知する高機能カメラを置く計画もある。
1年前に無差別殺傷事件が起きた東京・秋葉原では、地元の町会や商店街が設置を相談中だ。自治体や住民の主導で進める地区もある。
各種のアンケートでは大多数の人が「防犯カメラは必要」と答えている。「安全・安心」の象徴として求めているのだろう。警察が映像の任意提出を受け、犯罪の容疑者の逮捕につながった例も相次いでいる。
とはいえ、路上や広場に置かれた台数は、警察が把握できただけで約1万2千台。マンション内や銀行、コンビニなどを合わせると、私たちは毎日、無数のカメラに記録されている。
このあたりで一度立ち止まり、「防犯カメラ社会」について考えてみる必要はないだろうか。
カメラが設けられた地区で犯罪認知件数が減ったとの報告もある。ただ、犯罪の抑止に直接つながっているかどうかには、なお議論がある。
プライバシーの侵害を心配する人も少なくない。カメラの性能が向上して個人の識別が容易になった。膨大な量の画像を保存することも可能だ。ひとたびそれがネットに流出でもすれば、止めることはできない。
どこにカメラがあり、だれが見て、どんな風に使われるのか、多くの人が知らされないまま撮られている。
防犯カメラが併せ持つ有用性と危険性。その折り合いをどのようにつけていけばよいのだろう。
東京都杉並区で5年前、全国で初めて防犯カメラに関する条例やガイドラインを作った。街頭などへの設置は区長への届け出を義務づけ、カメラがあるとわかるよう表示させる。画像の保存期間は7日間。第三者に渡すことは原則禁止。違反したら区が勧告や公表をする。そういう内容だ。
その後、同様の決まりを作った自治体もある。警察のカメラには都道府県ごとの規則はあるが、保存期間や運用方法はまちまちだ。商店街では自主的ルールに任されているところが多い。
公共空間に設けられる防犯カメラについて、そろそろ国レベルで最低限のルール作りを検討してはどうか。
まず設置主体を問わず、カメラの運用実態の透明化をはかる。捜査機関への提供には厳格な条件をつける。警察のカメラ運用には第三者のチェックも必要だ。撮られた人の苦情を受け付ける窓口もいるだろう。
社会が防犯カメラをうまく使いこなすためにも、カメラをしっかりと監視する。その仕組みを考えたい。