日銀が6月の企業短期経済観測調査(短観)を発表した。企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、大企業製造業が過去最悪だった前回3月調査に比べて10ポイント上昇し、2年半ぶりの改善となった。
自動車などの在庫調整が進み輸出や生産が持ち直してきた。各国の経済対策による需要底上げ効果も出てきたのだろう。政府は6月の月例経済報告で景気の基調判断を2カ月連続で上方修正し、事実上景気の底打ちを宣言していた。短観は、輸出関連の大企業でみる限りこれに呼応する形になった。
だが、大企業非製造業のDIは3月比で2ポイント上昇の小幅改善にとどまり、中小企業では製造業が横ばい、非製造業は小幅悪化した。設備投資意欲は大企業製造業でも乏しく、景気の先行きは依然予断を許さない。
特に非製造業の景況感に注目したい。非製造業は内需が中心であり、景況感の改善ペースが鈍いことは内需の不振が依然深刻なことを表している。輸出関連を筆頭に企業の業況回復が内需に波及し、盛り上がってこなければ国内の景気の本格回復は望み難いだろう。
内需への波及の鍵となる雇用や賃金の状況は、今回の短観で企業の規模を問わず雇用の過剰感が示された通り、厳しいものがある。
厚生労働省が示した5月の有効求人倍率(季節調整値)は0・44倍で、1963年の調査開始以来最低となった。都道府県別では岡山0・57倍、香川0・71倍、広島0・54倍だった。また総務省発表の5月の完全失業率(季節調整値)は前月比0・2ポイント悪化の5・2%だった。新卒採用を抑制したり賞与を減額する企業も相次いでいる。
業況の改善した企業は特に、雇用環境改善に努力が求められる。雇用が安定を欠けば消費に影響し、やがては企業業績に響いてくる。今はエコ減税や補助制度が車の購入を後押しし、エコポイント制度で省エネ家電が売れているが、政府による消費刺激にも限界があろう。
雇用を守り、これ以上失業者を増やしたくない。また、賃金面の充実や新卒者の採用についても取り組みが望まれる。失業抑制に関しては、雇用調整助成金など国の支援策拡充も重要になろう。
外需、輸出頼みの経済のもろさは、景気の後退局面で立証されたばかりだ。雇用環境が改善されず、内需が低迷したままでは、景気は「L字形」で底ばいしてしまうだろう。