政府は、2010年度予算の大枠を示す概算要求基準(シーリング)を閣議了解した。衆院選を控えた与党の歳出圧力も反映し、一般歳出の上限額は52兆6700億円と過去最大に膨れ上がった。
シーリングは通常、7月下旬から8月上旬に決まるが、衆院解散・総選挙に備え、1カ月前倒しした。各省庁は8月末までに必要額を要求するが、衆院選で政権が交代すれば、予算編成の手法や中身が大きく見直されるのは必至だ。
歳出膨張の最大の要因は、社会保障費の伸びを毎年2200億円抑制するとした小泉政権以来の方針を撤回、高齢化などに伴う1兆900億円の自然増を容認したことによる。
公共事業費などは原則3%削減、防衛や大学関係費も1%減とし、「骨太の方針06」の歳出改革を踏襲する姿勢を見せてはいる。しかしその一方で、前年度計上の経済緊急対応予備費1兆円を継続して確保。うち3500億円を重点枠「経済危機対応等特別措置」として、公共事業などに充てるという。近づく衆院選や地方の景気に配慮した形で、歳出抑制は事実上棚上げされたといえよう。
財務省によると、08年度の一般会計決算は景気悪化による税収減で歳入が歳出を7180億円下回り、7年ぶりの「歳入欠陥」となった。財源の穴埋めに今後も国債の大量発行は避けられまい。長期債務残高は09年度末に816兆円に達する見込みで、財政は危機的状態だ。
10年度予算編成は選挙結果にも大きく左右されよう。財政悪化は将来不安による消費減退や金利上昇を招き、経済に跳ね返るリスクがある。いずれが政権を担おうと財政規律を取り戻す重い責務からは逃れられない、と肝に銘じておくべきだ。