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天声人語

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2009年7月3日(金)付

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 歌舞伎の「白浪五人男」で盗賊の親分格といえば日本(にっぽん)駄(だ)右衛(え)門(もん)。捕り手に囲まれ、「問われて名乗るもおこがましいが」と始めるせりふは舞台の華だ。出自や来し方を七五調で朗々と語る▼そして最後に「六十余州に隠れのねえ賊徒の張本(ちょうぼん)、日本駄右衛門」と番傘かざして見えを切る。ここはやはり「にほん」より、「にっぽん・だえもん」の語呂がいい。五輪の応援もしかりで、声に力を込めるにも「にっぽん」の方が具合が良いようである▼さて、「ニホン」なのか「ニッポン」なのか。国号をめぐる古くて新しい難問に、政府が「どちらでもよろしい」と答えを出した。いずれも広く通用しているから、というのが理由である。麻生内閣の、歴史に残る閣議決定になるかもしれない▼古代にはニッポンと発音されたそうだ。時を置かず二本立てになったというから根は深い。1934年には文部省の国語調査会がニッポンを正式とする案を決めたが、法制化されなかったいきさつがある▼佐藤首相時代の70年にも閣内で談論風発した。中曽根防衛庁長官(当時)らの論議を、首相が「万歳ひとつするにも、やはりニッポン国民万歳でなければ」と収めたと小紙が伝えている。ただし閣議決定にはなっていなかった▼二つの呼称が呼びさますものは様々に違う。時や場所、気分によって使い分ける幸いが日本人にある、ということだろう。ちなみに麻生首相のベストセラー本は『とてつもない日本(にほん)』。祖父吉田茂の門下生だった佐藤とは違うセンスも、また良しである。

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