米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)が、トヨタ自動車との合弁撤退を決めた。車産業は、量より環境対応などの質、技術を追う時代だ。企業間の協調関係に頼る余地はなくなった。
GMとトヨタが米カリフォルニア州で進めてきた合弁事業は、日米の二大メーカーによる日米自動車摩擦の解消策として、四半世紀に及んできた。トヨタは、合弁工場で米国流の労働慣習などを学び単独進出の足掛かりとした。GMも当時米市場を席巻した、日本製小型車の生産手法を学んだ。
トヨタの新社長となった豊田章男氏も派遣されたことがあり、合弁は両社の首脳のホットライン的な役割を果たしたともいえる。
しかし、米政府主導で再建策をつくっているGMは、再建の中心となる新GMに合弁事業が必要ないと判断した。GMは合弁でトヨタ流の生産を学んできたというが、小型車ブランドのサターンを新GMに不必要として売却。小型車造りでは、長年の合弁の成果を出せなかったというのが現実だ。
もはや合弁で小型ガソリン車を限定的に生産しても、GMの体質を劇的に変えるに至らないというのが本音だろう。
過剰な生産能力を抱えるトヨタにとっては、合弁工場の単独運営がさらなる重しとなる。GMとしては、株売却による資金確保と、競争相手の力をそぐという二重の効果も見いだせる。
北米の自動車市場は、不況で大きく落ち込んでおり、自動車メーカー各社は新興国シフトを進めている。しかし米政府は、車産業の質の転換を図るため、環境対応車シフトへの支援を強め、政策的なてこ入れに動いている。
日産自動車は米政府から約千五百億円の融資を受け、現地で電気自動車を生産する。ホンダやトヨタも新型ハイブリッド車のお披露目を米国で先行させるなど、北米市場は世界のメーカーが先進技術を競う場に変容しつつある。
燃料電池も含め、どの技術が次世代の環境対応車の主流となるかで競う中、メーカーは生き残りのため、資金と人を焦点を絞って投入し始めている。協調に見切りをつけたGMの合弁撤退も、その動きといえよう。
車産業が規模を確保するため再編に動き、ブランドの知名度や多さを力とする時代は終わった。各メーカーには、技術を厳しく選別する消費者にこそ、正面から向き合う姿勢が求められている。
この記事を印刷する