国立教育政策研究所のいじめ追跡調査で、8割を超す小中学生が被害、加害の両方を経験していることが分かった。
2004年から3年間、首都圏のある市で小中学生約4800人を調査した。それによると中3の11月時点で80・3%が仲間外れや無視、陰口の被害を受けていた。ところが、加害経験の質問でも経験なしは少数にとどまり、81・3%がいじめをしていたとの結果になった。
小学生についても、6年の11月時点で86・9%が被害を受ける一方、加害経験のある子が84・0%に上った。
いじめについては、同じ子どもが被害者にも加害者にもなり得ると言われてきた。数字によってこれが裏付けられたといえる。研究所の分析通り、被害者と加害者は常に入れ替わっているだろう。いじめる側といじめられる側を固定的にとらえる考え方は改めねばなるまい。
文部科学省はこの数年、いじめを行う子に対して厳しく対処する「ゼロ・トレランス(非寛容)」という米国流の指導法を全国の学校に広めてきた。学校での指導法については再考してみる必要があろう。
とはいえ、今回はまだ、いじめ問題の深い闇の一端が垣間見えたにすぎない。
昨年秋、文科省が公表した小中高校の問題行動調査では2007年度のいじめ認知件数は10万件を超えた。だが、深刻さが言われるネットいじめは6%にとどまり、疑問の声が出た。
いじめの定義自体がたびたび変えられ、調査結果が大きく変動してきた。大人たちも悩みを抱えている。
知らなければ有効な対処策は打てない。国、都道府県、市区町村と各レベルで、いじめの実態をつかむ努力をなお続けていかなければならない。