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天声人語

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2009年7月2日(木)付

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 いろいろとある数字の中でも、「3」には独特の安定感があるようだ。三羽ガラスに三大美人、三位一体もあれば三種の神器もある。三役、三悪、三部作……腹に落ちておさまりがいい▼さて、同じ「3」でもこちらはどうだろう。幼い子を乗せる自転車の「3人乗り」が、きのうから天下晴れて認められるようになった。子育てに奮戦するお母さんたちの声が、行政を動かした形である▼3人乗りは、もともと違反だが目こぼしされてきた。警察が厳しくする方針を打ち出すと、育児の足を奪わないでと悲鳴が上がった。メーカーが安定を工夫した専用の自転車を開発し、それに限って認められることになった▼朗報ではあろうが、値はかなり張る。購入費用を補助したり、レンタルを計画したりする自治体もある。使うのはせいぜい数年だろう。子育て世代の負担にならず、安易に廃棄物にもしない、賢い買い方と使い方を考えたいものだ▼自転車は時代のありようを映してきた。昭和の初め、「二十四の瞳」の女先生は自転車で分教場へ乗りつけて、おてんばと言われた。戦争が終わると「青い山脈」の若人が銀輪を連ねて自由を謳歌(おうか)した。そして核家族化が極まった今、親子の3人乗りが街を行き交う▼保育園の入所待機者は増え、育休切りや、母子加算の廃止など、子育てをめぐって吹く風は冷たい。3人乗りを認めて一件落着、とはまいらない。老いゆく日本の宝である。不安定を親だけに押しつけず、ここは行政と職場と地域の三位一体で「授かりもの」を育てたい。

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