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黒い粒を見ながら2人が言い合っている。1人は「虫だ」と言い、もう1人は「いや黒い豆だ」と。やがて粒が動き出したが、それでも「豆」の方は説を曲げない。「這(は)っても黒豆」のことわざは、明白な事実を前に、なお言い張ることをさす▼がんこ者の意地なら笑い話だが、一国の態度となれば笑えない。日米間の「核持ち込み密約」をめぐる政府の答弁は、それを地でいく。米側の公文書などで密約は裏付けられているのに、一貫して「存在しない」と否定してきた▼核兵器を積んだ米国の船が日本に寄港したり、領海を通ることを認めた秘密の合意である。これまでの証拠に加え、先日は元外務事務次官が「歴代引き継いできた」と明かした。しかし政府はかたくなに、態度を変えようとはしない▼もはや「這っても」どころか「跳ねても黒豆」の強弁だろう。河村官房長官は誠実な人柄で、被爆者の支援にも熱心と聞く。木で鼻をくくったような答弁には内心、忸怩(じくじ)たるものがあろうと想像する▼「黒豆」のたとえは可愛いが、要は政府の嘘(うそ)である。「一つの嘘をつき通すには、別の嘘を二十発明しなくてはならない」と言うから心配になる。非核三原則の一つの「持ち込ませず」をめぐる虚実を、国民は知る権利がある▼かのコロンブスは航海中、二つの日誌をつけていたそうだ。片方は偽りで、実際より短い航海距離を記して、陸から遠く離れるのを恐れる乗員らに読ませたという。情報公開の時代に遅れた「嘘も方便」など、日本丸の乗組員としては願い下げである。