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閣僚人事―大騒ぎの末のこの誤算

 麻生首相はきのう、経済財政担当相に林芳正氏、国家公安委員長と沖縄・北方担当・防災相に林幹雄氏をあてる内閣の補充人事を決めた。一方、同時に模索していた自民党役員人事の方は断念した。

 閣僚に起用されたふたりの林氏は、ともに昨年8月の福田改造内閣で初入閣した。翌月の福田首相の辞任、麻生内閣の発足で2カ月足らずの大臣暮らしに終わった。幹雄氏の方は、その時のポストへの復帰である。

 首相は中川昭一財務相、鳩山邦夫総務相の辞任という事態を、与謝野経済財政相と佐藤国家公安委員長の兼務でしのいできた。それを手当てするのが今回の人事の目的だ、と首相は言う。

 だが、今国会での重要法案はほとんど片づいている。首相の言葉を額面通りに受け取る国民は、ほとんどいないのではないか。

 衆院議員の任期満了まで残り70日余り。この時期に党役員と閣僚人事に手をつけようというのは、劣勢が言われる総選挙に向けて、何とか政権の勢いを取り戻そうとの思惑があったからだろう。

 選挙戦になれば街頭演説や政策討論会の前面に立つ党幹事長や政調会長に、首相側近の菅義偉氏や知名度の高い舛添厚生労働相の起用が取りざたされた。タレント出身の東国原・宮崎県知事の閣僚登用説まで飛び出した。

 だが、首相を支えてきた派閥の実力者や党幹部らの理解を得られず、役員人事は見送らざるを得なくなった。選挙間際になっての露骨な人気取り作戦に二の足を踏む向きもあったかもしれない。

 ともかくも、閣僚人事だけは実行したが、政権浮揚への最後のカードは中途半端な結果に終わってしまった。

 「私の口から『党役員人事をやる』という話は、ただの一度も一言も聞いた人はいないと思います」。首相はきのう、記者団にこう語り、方針転換はなかったかのように装ったが、大きな誤算だったのは間違いない。

 衆院の解散・総選挙に向けて、首相のいばらの道はなお続く。5日には静岡県知事選、12日には東京都議選がある。ともに接戦が予想され、結果次第で自民党内の「麻生おろし」の動きが広がりかねない。

 ふたつの地方選挙の間に、首相はイタリアでのG8サミットに出席する。これだけ政権の足元が揺らいでいては、どれほどの存在感を発揮できるのか、疑問もわいてこざるを得ない。

 首相の苦境は、長期政権を続けた末の自民党が直面している統治能力の低下を象徴するものでもある。

 総選挙で国民に信を問うことを避け続けていては、とても党の再生はおぼつかない。その現実に早く向き合うことだ。

鳩山氏虚偽献金―ああ、なんといい加減な

 民主党の鳩山代表が虚偽献金の事実を認め、陳謝した。すでに死亡した人や、一度も献金したことがない人の名前を、個人献金者として政治資金収支報告書に載せていたという。

 なぜ、そんなことをしたのか。なお納得できない点は少なくない。

 鳩山氏は4人の弁護士に調査をゆだね、疑惑発覚から2週間で判明した経緯を説明した。それによると、架空の献金額は資料が保存されている05年以降で2100万円を超え、名前が使われた人は約90人に及ぶ。

 経理を担当する公設秘書が、個人献金を集める仕事を怠っていたのを隠すため、普段から預かっている鳩山氏個人の金を流用し、架空の献金をでっちあげていたという。

 二十数年つとめてきた秘書が独断でやり、鳩山氏自身は知らなかったと述べた。だとしても、報告書への虚偽記載は明白だ。政治資金規正法の違反である。鳩山氏の責任は重い。

 流用された金額は年に400万〜700万円にのぼる。資産家として知られる鳩山氏だが、一昨日公表された年間所得は3千万円弱である。

 普段から1千万円を超える金を秘書に預け、鳩山氏の私的な支出にあてさせていたというが、本当に鳩山氏個人の金だけだったのか。出所を明かせない裏献金は入っていなかったか。他にも疑問はいくつもある。

 個人の金と政治資金が長年にわたってごちゃ混ぜにされていたのに、どのように使われたか、鳩山氏本人は関知していなかったことになる。なんとも釈然としない人は多かろう。

 小沢一郎前代表の公設秘書が逮捕された違法献金事件の反省から、民主党は3年後に企業献金を全廃し、個人献金を拡充する政策を総選挙マニフェストの柱の一つに掲げる方針だ。だが、その旗をふる立場の代表自身の個人献金がこの体たらくでは説得力を欠く。

 それにしても、政治資金をめぐる与野党の政治家のスキャンダルが止まらないのはあきれるばかりだ。

 共産党を除く各党にあわせて年間約300億円の助成金が交付されているというのに、このけじめのなさはいったい何なのか。巨額の税金が投入されている以上、こんないい加減な扱い方が許されるはずがない。

 与党は、総選挙を前にしてライバル民主党の代表の失点が表ざたになり、勢いづいている。だが、国民の怒りは与党にも向けられていることを忘れてもらっては困る。

 商品先物取引会社から迂回(うかい)献金を受けていたと指摘されている与謝野財務相や、西松建設から資金提供を受けた二階経済産業相ら自民党の議員たちは、まともな説明すらしていない。

 野党批判もいいが、まず自らの襟を正すのが先ではないか。

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