石川県議会で小中学生の携帯電話所持を規制する全国初の条例案が可決、成立した。有害サイトから子どもを守る目的だが、携帯所持には保護者の賛否両論があり、強制がなじむかどうか疑問だ。
賛成多数で可決された「いしかわ子ども総合条例」改正案は、保護者に「防災、防犯など特別な場合を除き、携帯電話を持たせないよう努める」と努力規定が加わった。罰則はない。
携帯所持を肯定する保護者は「不審者対策など防犯上、持たせたい」「帰りが遅いときGPS(衛星利用測位システム)機能で居場所が分かる」などと主張する。
一方、携帯の出会い系やアダルトサイトなどは犯罪やいじめの温床になりがちで、さらにはメールばかりでコミュニケーション能力が不足すると不安がる声もある。
四月から「青少年インターネット環境整備法」で、事業者に有害サイトの閲覧を禁じるフィルタリング規制が義務付けられた。保護者の申し出で解除できる。
石川県の試みは所持規制にまで踏み込んだとして注目された。同県では初めて議員提出された政策条例案で、発案した自民党側は県と議会が対等のいわゆる「二元代表制」にこだわったようだ。県側はフィルタリング規制の解除条件を厳しくする条例案を提出していた。
議会の取り組みはいいとしても、これほど影響の大きな事柄を決めるのに審議過程で関係者の参考人招致を見送ったのは、どうしてなのか。「議員は県民の代弁者だ」というが、それだからこそ、この問題の本質に迫る、具体的かつ広範な議論が期待されたのではなかったのか。県内ではPTA連合会が「小中学生に原則持たせない」と宣言している。逆に、関係学会や事業者からは慎重な審議を求める陳情も届いていた。県側は「権利侵害で県が訴えられる恐れもある」と懸念を表明した。
家庭の問題を一律にしばるというのは、一体どうなのだろう。携帯電話以外にも子どもを脅かす要因はたくさんあるはずだ。実際、条例成立に戸惑う保護者は多いのではないだろうか。携帯に心のよりどころを見いだしている子どもたちもいるだろう。
携帯所持は「善か悪か」で語れない。だからこそ、議論を尽くしてほしかった。施行の来年一月まで時間はある。目的である青少年の健全育成へ向け、総合的で実効性のある議論を続けてほしい。
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