麻生太郎首相が何も決められないでいる。着手したはずの自民党役員人事や内閣改造も、党内の反発で怪しい状況になった。これ以上の迷走は政治を混乱させるだけである。解散の決断を求める。
「そう遠くない日だ」−。衆院解散・総選挙の時期について、首相は先週こんなメッセージを発信したばかりだ。これを機に政界では、役員・改造人事で人心一新を図り、早期解散に打って出るとの観測が一気に広がった。
最速では、七月一日に人事、二日に解散、八月二日総選挙−の日程が浮上していた。七月十二日投開票の東京都議選で敗北すれば解散に踏み切れないかもしれない、だから先手を打つ、との狙いも首相サイドにはあったのだろう。
だが、内閣支持率が再び10%台に低迷する中、党内では早期解散に慎重論が根強い。党役員への人事の根回しもほとんどなく、幹部から反発も相次いだ。
このため、先週末の細田博之幹事長との会談で、首相は「外野が勝手に作り上げているだけだ」とトーンダウン。キツネにつままれたような話になり始めた。ナンバー2の幹事長とすら腹合わせをしていなかったのは信じられない。
あらためて首相に促しておく。自ら決断すると宣言した以上、解散から逃げてはならない。いいかげん覚悟を固めないと麻生降ろしに拍車を掛けるだけではないか。
自民党にしても、首相を批判できる資格があるのか。最近の右往左往ぶりは目を覆う。
国民的人気を当て込んで東国原英夫宮崎県知事に出馬要請したところ「次期総裁候補にするなら」と足元をみられ、ベテラン議員らが反発するドタバタ劇を演じた。根深い政治不信は人気取りだけで解消されまい。政権党の「矜持(きょうじ)」はどこへいったのか。
一方、首相に距離を置く議員は公然と麻生降ろしに動き始めた。総裁選を前倒しして総選挙はポスト麻生で戦いたいらしい。だが、河村建夫官房長官は「表紙を変えただけで国民が理解するのか」と語った。その通りだ。
旧来の自民支持層にも戸惑いや落胆が広がる。民主党に疑問符をつけたはずの「政権担当能力」が自らに跳ね返る現状でもある。
首相は初心に戻ってはどうか。これ以上有権者を待たせてはならない。自らの決断力を示す最後の機会を生かしてもらいたい。「決断できない首相」と言われ続けるのは、本意ではあるまい。
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