酒に種類は数々あれど、三〇度を超えるような暑い日が続くようになると、やはり、ビールだ▼十九世紀、ドイツで発行されたビール関連のパンフレットはその美点をこう表現している。<飲み物の長所の三つ一組は/ビールにいっしょになっている。/ミルクの栄養と、水の冷たさと、/ワインのほのお>(『西洋故事物語』)▼事ほど左様に、ドイツには古く、ビールが体によいことを述べたものが多いそうだ。本場の国の言い分だけに割り引いて聞く必要があるが、少なくとも、気分がよくなることは体験的にも分かる。いや、科学的にも分かったらしい▼名古屋市立大大学院の研究グループがマウスの実験で明らかにした。一日一回、一カ月間、ビールを飲ませたところ、脳で増えると、不安を和らげたり気分を静める効果がある特定のタンパク質が、脳を含む全身で二倍になったのだという▼多くの酒席が「とりあえず、ビール」で開幕を告げるのも、その効果ゆえか。夜半、仕事を終えて帰宅し、まずは冷蔵庫の缶ビールを一本、などという場面を考えれば一層、ストレスがほどけていく感じは分かる▼晴れた日には屋外で飲むのもいいが、こんな句も。<ビヤガーデン話題貧しき男等よ>吉田耕史。言われてみれば、確かに…。でも、多分、それがビールなのだ。ストレスを増すような難しい話は似合わない。