医師を乗せて患者を運ぶ“空飛ぶ救命室”ドクターヘリの出動が、日本航空医療学会の調査で2008年度は全国で計5635回に上った。本格運用が始まった01年度の6倍超だ。とはいえ、ドクターヘリを導入している病院は01年度の5病院から16道府県の18病院に増えたにすぎなかった。
運んだ患者は5182人だった。交通事故や労災などによるけがが約半分に上り、心疾患や脳疾患が27%を占めた。最も多いのは日本医科大千葉北総病院の663回。中四国唯一の川崎医科大付属病院(倉敷市)は425回で6番目に多かった。
川崎医科大付属病院は、全国に先駆けて1999年に試験配備、01年度から本格的に運用を始めた。岡山県内をはじめ広島、香川、兵庫県の一部をカバーし、特に山あいや離島など、医療機関が不足する地域で重症患者が出たときなどに威力を発揮している。
国と自治体が補助している運用費(1機当たり年間1億7千万円)について、総務省は3月、自治体負担分の半額を特別交付税で支援することを決めており、導入への弾みになりそうだ。しかし、国は基準となる出動回数を「年間240回」としており、出動件数が増えれば増えるほど赤字になり、運航会社などが負担しているという。また、専門的な医師、看護師の養成やパイロット、整備士などの育成も課題になっている。
厚生労働省研究班によると、救急車と比べてドクターヘリは医師による治療開始時間を平均26分短縮でき、死亡を27%、重度の後遺症を45%減らす効果があるという。大切な命を一人でも多く救うため、さらなる普及に向けて、一段の財政支援とスタッフ養成体制の整備が必要といえよう。