携帯電話の世界最大手、フィンランドのノキアと半導体の世界最大手、米インテルが提携した。「スマートフォン」と呼ばれる高機能携帯端末を共同で開発するのが狙いだ。
ノキアは世界の携帯端末市場で4割、インテルはパソコンのMPU(超小型演算処理装置)で8割のシェアを握る。両社があえて手を組んだ背景には、米国を中心に広がる「クラウドコンピューティング」と呼ばれる新しいネット技術がある。
英語で「雲」を表すクラウドはインターネットで結ばれた巨大なサーバー群を指す。高速ネットの普及により、クラウドコンピューティングを使えば、応用ソフトやデータを自分のパソコンに置かず、ネット上で自由に使えるようになった。
クラウドが広まれば、パソコンも以前ほど高い機能は要らなくなる。むしろ持ち運びに適した通信機能や電池駆動の長さが重要だ。インテルはすでに低価格・超低消費電力型のMPUを開発して「5万円パソコン」市場を育てたが、その次に狙ったのが携帯端末だったといえる。
スマートフォンはカナダの「ブラックベリー」が先駆けで、火を付けたのは「iPhone(アイフォーン)」を発売した米アップルだ。クラウドで先行する米グーグルも携帯向けソフトの「アンドロイド」を投入、競争に拍車がかかっている。
インテルとノキアの提携はこうした新規参入に対し独自技術を開発し、携帯市場で新たな覇権を目指すためだ。インテルと一緒にパソコン市場を制した米マイクロソフトも「ウィンドウズモバイル」で携帯市場でのシェア拡大を狙っている。
問題は日本の携帯端末だ。NTTドコモはブラックベリーやアンドロイドを扱い、ソフトバンクモバイルはアイフォーンを販売し、国内メーカーはシェア低下傾向が否めない。日本は「iモード」で携帯インターネットの先べんをつけたが、独自技術にこだわった結果、後発の外国勢に外堀を埋められてしまった。
パソコンも登場当初は技術が乱立していた。高機能携帯端末も今は草創期にある。その中で日本発の技術を世界にどう広めるのか、どこと組んで世界標準獲得を狙うのか、経営戦略のカジ取りが問われている。